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『ラヴクラフト全集6』ブックガイドその2

当ブックガイドは以下の内容を含みます。
・内容やあらすじ
・読みやすさについてのうp主の主観
※結末に触れることがあります。ネタバレを回避したい方にはおすすめしません。
※需要? 知らんな

前回は全集第6巻のうち前半4編をご紹介しました。
それでは後半5編、ランドルフ・カーターシリーズをご案内しましょう。

ランドルフ・カーター》はラヴクラフトの分身とも言うべきキャラクターで、おおいなる「夢見る人」でもあります。
最初の2編「ランドルフ・カーターの陳述」「名状しがたいもの」では夢の世界は登場しませんが、カーターシリーズということで、このドリームランド特集号に収録されています。

ランドルフ・カーターの陳述』The Statement of Randolph Carter
読みやすさ:★★★★★ カーターが、ある事件について証言しているという体裁の小説。話し言葉で書かれているので、とても読みやすいです。それに、この話はかなり有名なので、そういう意味でも読みやすい。文庫で12ページくらい。
もはやこれはアガサ・クリスティの『アクロイド殺し』と同じように、「結末を知らずにこれを読める人は幸せだ」状態にある小説だと思います。衝撃のラスト1文があまりにも有名になりすぎていて、タイトルは知らずとも読むうちにそれと気付くでしょう。
登場人物が「カーター」と「ウォーラン」です、と言えばもうバレバレか。
有名な台詞の元ネタを知りたい人はぜひ読んでみてください。

『名状しがたいもの』The Unnamable
読みやすさ:★★★☆☆ どうだ怖いだろうと言わんばかりに陰鬱な描写が続くので、ちょっと読みにくい。文庫で13ページくらい。
ストーリーも、正直言って「一体何が起こっているんだ」って感じです。何回読んでも今一つピンときません。まぁその曖昧模糊とした出来事こそが、「名状しがたいもの」なのかもしれない。いや、うまいこと言えてない。読解力なくてすみません。
夜の墓地で怖い話してたら本当に怖いものを呼び寄せてしまったぜ……! という話だと思いますが、なんだかいろいろと唐突でポカンとしてしまいます。
でもこれ、もしゲームだったらかなり怖い。だらだらと怖い雰囲気のお膳立てだけされて、そして油断したところでいきなりビックリポイントがあるような感じです。
雰囲気小説というか、描写のじっとりホラー感はすごい。
名状しがたいものを描き出すという、自家撞着する小説。それこそがクトゥルフ神話ですね。


『銀の鍵』The Silver Key
読みやすさ:★☆☆☆☆ めっちゃ読みづらい。後半はそこまででもないけど、前半は目がぐるぐるになる読みにくさです。ぐぬぬ。文庫で21ページくらい。
夢の世界を訪れる力を失い、現実に疲れたカーターは、あるときついに世界の門たる銀の鍵を手に入れ、そしてそのまま失踪した……という話。
カーターさんの世俗に対する愚痴や、これまでの人生の記述がすごく綿密。「もう現実ヤダ」って一言でいいじゃないですか……(文学に対する暴言)
もうこれはラヴクラフト氏の私小説なのではないでしょうか。
とにかく彼は、この地球上から姿を消した。そしてどうなったのか、次回に続く……


『銀の鍵の門を越えて』Through the Gates of the Silver Key
読みやすさ:★★☆☆☆ 『銀の鍵』の続編ですが、前作よりは多少読みやすい。文庫で68ページくらい。
『銀の鍵』の続編です。失踪してしまったカーターの遺産相続会議がどこかの一室で行われている、というところから話はスタート。ところがその会議には、カーターは生きていると主張する、謎のヒンドゥー人が出席している……
そのヒンドゥー人が語るカーターの体験が、この物語です。壮大な宇宙と時間と次元の旅の描写を堪能してください。
《導くもの》との問答の末に、《窮極の門》を通り抜けたカーター。三次元を越えて上位の次元に至る描写がすごい。
多次元世界では、カーターはカーターでありながら祖先すべてのカーターであり、人類誕生以前の生物であり、無数に存在する異星人でもあったんだよ! な、なんだってー。
そして惑星ヤディスの魔道氏ズカウバ(名前すごい)が見る夢の一部がカーターであるという意識に至ったカーターさん。(もうこの段階でなんか次元とか宇宙とかそういう問題じゃない)
カーターとしての意識も強くなり、もはやズカウバはひとつの実体ではなく、ズカウバとカーターふたつの実体を有する意識体であった。
そしてカーターは気付く。ヤディス星から地球へ帰る方法がないことに。銀の鍵と一緒に箱の中に入っていた、銀の鍵の力を行使する方法の記された羊皮紙を、地球に忘れてきてしまったからだ!
(笑)
そして地球では遺産相続会議が行われている。このままではあの羊皮紙が、親族の誰かの手に渡るか、無用のものとして処分されるか、そういうことになってしまうではないか! さあカーター、どうするどうなる。
というわけで、スケールの大きな宇宙の旅と、人間たちの遺産相続会議が、最後にはひとつに集約するその発想、さすが宇宙的怪奇小説作家ラヴクラフト。脳味噌ねじれそう。


『未知なるカダスを夢に求めて』The Dream-Quest of Unknown Kadath
読みやすさ:★★★★☆ 冒険活劇的ストーリー展開なので、次どうなるんだろう…!っていう気持ちでぐいぐい読めます。長いけど。かつてハリポタとかナルニアとか読破した人なら普通に楽しく読めると思います。文庫で160ページくらい。
カーターがドリームランドの壮麗きわだかな都を求めて周遊する話。様々な試練を乗り越え、カーターは目的の場所へ辿り着けるのか……
とりあえずね、この話長いけど、何をおいてもとりあえず読んでほしいのは、この旅最初の試練、黒いガレー船に捕えられ月棲獣に捧げられそうになったカーターがいかにその危機を脱したか、というシーンです!
もう……これは……(反転ネタバレ:ギリシャ軍やっちゃってるじゃないですかー。原作小説でギリシャ軍やられたら二次創作でなんてできるわけないじゃないですかー。
カーターはドリームランドの猫と仲良しなので、彼の猫との触れ合いシーンはたいへん和みます。
それにしてもカーターさんハイスペック。猫語もズーグ語も食屍鬼語も分かるってすごいマルチリンガル。逆に言えば、それだけドリームランドに精通していなければこんな波乱万丈な旅はできないでしょう。
にゃんこCoC現行セッションの使用シナリオ(「レモン色の帆」)は、かなりこの小説に雰囲気が似ています。セッション進行も、こんな感じのわくわくはらはらどきどきを目指したいところ。


次は何をご紹介しましょうか。
個人的には全集の中で第5巻が好きなので、それを紹介するかも。


そのうちコメレスとかもしようかな。
いつも本当にありがとうございます、動画作成の活力です。