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『ラヴクラフト全集6』ブックガイドその1

当ブックガイドは以下の内容を含みます。
・内容やあらすじ
・読みやすさについてのうp主の主観
※結末に触れることがあります。ネタバレを回避したい方にはおすすめしません。
※需要? 知らんな

今回は『ラヴクラフト全集6』(創元推理文庫)をご紹介します。
いきなり6巻かよという感じですが、この全集では、第6巻がドリームランド特集なのです。
現行シリーズがドリラン卓ですので、やはりここから紹介するのがよろしいでしょう。

収録されているのは、
「白い帆船」
「ウルタールの猫」
「蕃神」
「セレファイス」
ランドルフ・カーターの陳述」
「名状しがたいもの」
「銀の鍵」
「銀の鍵の門を越えて」
「未知なるカダスを夢に求めて」
の9編です。

今回は前半4編についてご案内します。後半5編のランドルフ・カーターシリーズは次回に。


『白い帆船』The White Ship
読みやすさ:★★★☆☆ 文体は淡々としている。物語も淡々としているので、途中で飽きる可能性がある。文庫で10ページくらい。
灯台守が夢の世界に足を踏み入れる話。
一人きりで一日中海を見つめるだけの男がその波の彼方に謎めく船を見出したとしても、何も不思議はないですね。彼はその船にいざなわれ、ドリームランドを周遊します。さまざまな地名が登場するから楽しい。
濃度の高い美しさと恐ろしさが同居するドリームランド世界の雰囲気を、十分に感じられると思います。
結末は、うん、こういうの、よくあるよくある。異世界で分不相応に振る舞った人間の末路って感じ。「多くを求めすぎるものは何も得ない」


『ウルタールの猫』The Cat of Ulthar
読みやすさ:★★★★★ ラブクラフトにしては、かなりさっぱりした文体。修飾語句が少なくて1文が短い。……と思って読み進めてたら、猫の描写になった途端にイキイキと書き込まれるので面白い。文庫で6ページくらい。
あらすじは動画内(にゃんこドリラン#2)でドイツさんがご説明くださいました。とても短いので、さらっと読めます。
にゃんこCoCシリーズをご視聴いただいている皆さまなら、まずこの1編を読んでみるのがよろしいかと存じます。


『蕃神』The Other Gods
読みやすさ:★★★★☆ そこそこ読みやすい。「ウルタールの猫」を先に読んでおけばもっと読みやすくなるよ。文庫で8ページくらい。
「いかにもクトゥルフ」(ver.ドリラン)という感じ。神にまみえようとハテグ=クラの険しい山頂を目指し、神の怒りによって恐ろしい目に遭う神官2人の話です。よくある、よくある。
「ウルタールの猫」で登場したモブの少年、お前いつの間に神官になったんだ! ラヴクラフト作品は、作品同士のこういうちょっとしたリンクが楽しいですね。
あと神官のおじいちゃん元気すぎ。
ドリームランドにおける「大いなる神」の描写は、読んでおいて損はないです。


『セレファイス』Celephais
読みやすさ:★★★☆☆ 美しい描写に浸れる人なら読みやすい。そうじゃない人なら、長くて事細かな描写に目が滑るかも。文庫で10ページくらい。
セレファイスというのはドリームランドの都市名。夢見る力によってこの都市を作り上げた「夢見る人」クラネスの話です。
世界の緻密な描写がすごい。よくここまで書き込めるなあ。にゃんこCoCドリラン卓のドイツさんにはぜひこういう描写を目指していただきたいところですが、当然のようにうp主の力不足で残念。
美しいセレファイスと対照的に、クラネスは現実世界でひどく落ちぶれていきます。夢の世界での栄光と、現実世界での没落。そして夢に逃げる→落ちぶれる、という負のスパイラル。
ドリームランドという概念を理解するのにうってつけの1編です。
結末が秀逸で、すごく好き。最後の長い1文、だらだらと修飾部が続くその1文の意味を把握したときの、じんわりした衝撃をぜひ味わってください。


残り4編についてはまたいずれ。
動画#3も、近いうちにあげます。この土日で作業する。